フルマラソンを速くする3因子の使い方― VO₂max・LT・ランニングエコノミー
- 松澤ゆかり
- 10月28日
- 読了時間: 3分
―フルマラソンの記録は
「最大酸素摂取量(VO₂max)」「乳酸作業閾値(LT)」「ランニングエコノミー(RE)」
の3因子で大まかに説明できます。

難しく見えますが、要は「どれだけ酸素を取り込めるか」「どの強度まで糖代謝を安定して使えるか」「同じ速さでどれだけ省エネで走れるか」という三本柱です。
この視点で練習と補給を設計すると、迷いが減り、成果が安定して現れます。
⸻1.VO₂max ― まず“上限”を押し上げる
VO₂maxは、運動強度を上げたときに酸素摂取量が頭打ちになる点で定義される「酸素利用能力の上限」です。
心臓の拍出量(1回拍出量 × 心拍数)と、筋肉が血液から酸素を取り出す能力で決まります。短期的にはインターバルトレーニング(例:3〜5分×4〜6本、同時間レスト)で心拍出と換気能力を鍛え、長期的には継続的な有酸素走で毛細血管やミトコンドリアの発達を促します。
ミトコンドリアの増加は6週間前後でも確認されやすいため、メソサイクル設計の単位として適しています。
⸻2.LT ― マラソンの“巡航速度”を高める
LTは乳酸が急増し始める境目であり、ここに対応する速度が上がるほど、マラソンの平均ペースも向上しやすくなります。
トレーニングでは、LT付近の持続走やテンポ走(20〜40分連続)、LTクルーズインターバル(例:5〜8分×4〜6本、短レスト)を配置。また、補給戦略も重要です。レースでは糖質を計画的に摂取し、解糖系の枯渇を遅らせます。
トレーニング段階から胃腸への慣れを作っておくと、本番での吸収が安定します。
⸻3.ランニングエコノミー ― 同じ速さを“安く”走る
RE(ランニングエコノミー)は、一定速度での酸素コストを示す指標です。
フォーム、筋腱の弾性、接地時間、上下動などが関係します。改善のためには、ドリル(スキップ、ハイニー、流し)、接地リズムの最適化、短い登坂走、補強(股関節外転・内転筋群、腓腹筋・ヒラメ筋強化)などが有効です。
週2〜3回、10〜20分のドリルを“走る前”に入れると、その後のメイン練習の経済性が向上します。
⸻練習の配列例1週間の例:
• 月:オフまたは補強+ゆるジョグ
• 火:LTインターバル
• 水:有酸素ロング
• 木:ドリル+流し
• 金:ジョグ+補強
• 土:VO₂max系インターバル
• 日:E〜Mペースのロング走
3〜4週ごとに1週イージーをはさみ、6週間を1ブロックとして適応の進み具合を確認します。
⸻酸素負債とウォームアップ
運動開始直後は酸素供給が立ち上がりきらず、“酸素借”が発生します。
ウォームアップで心拍と血流をあらかじめ上げておくと、主観的な強度の急上昇を抑えられます。
流しを数本入れると、運動様式特異性が整います。
⸻評価とトラッキング
定点での心拍―ペース関係、LT相当ペース、VO₂max推定値、主観的きつさ、体重変動などを継続的に記録しましょう。
月ごとにRE系の指標(同一ペースでの心拍)とLTペースの推移を見ると、トレーニングの方向性が適切か判断できます。
⸻補給と体調管理
長時間走では、糖質・水分・電解質の3点を計画的に管理します。
日常の食事では、タンパク質・鉄・ビタミンB群を欠かさず摂りましょう。
朝食抜きでの長時間走を頻発させるのは避け、回復を優先します。
自分の生活リズムに合わせた補給習慣を整え、体重だけを追うのではなく、パフォーマンス指標と合わせて見ることで、無理のない調整が可能です。
パフォーマンスコーチ松澤ゆかり
【パーソナル×ピラティス×栄養指導】88-Performance.
札幌市西区琴似四条7丁目2-11サッソンビル1階
0115900725





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