強い突きは「力み」では生まれない。
- 今野佑人
- 2月8日
- 読了時間: 4分

世界トップ打撃選手の筋電図が示した“ダブルピーク”という事実。
空手の突きにおいて、
「しっかり握り込め!」
「力込めて押し込め!」
という指導は、長く行われてきました。
しかし近年のバイオメカニクス研究は、
強い打撃ほど“力み続けていない”
という事実を示しています。
その代表例が、
世界トップレベルの打撃選手の筋電図に見られた
〝ダブルピーク〟
という現象です。
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ソースとなった一次論文
この知見の元になっているのは、
カナダの脊柱バイオメカニクス研究者として世界的に有名な
スチュアート・マクギル博士(Stuart McGill) らによる論文です。
この研究では、
エリートMMAファイター(世界レベル) を対象に、
パンチなどの打撃動作中の
・筋電図(EMG)
・動作解析
を同時に計測しました。
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〝ダブルピーク〟とは何か?
論文で確認されたのは、
打撃動作中の筋活動が
① 一度強く出る
② いったん下がる
③ インパクト直前にもう一度強く出る
という
二つの山(=ダブルピーク)
を示すことでした。
重要なのは、
「ずっと最大収縮しているわけではない」
という点です。
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研究者の解釈
マクギルらはこの現象を、
次のように整理しています。
第1ピーク:動作開始時の“土台づくり”
・突きを出す直前
・体幹、股関節まわりの筋群が一瞬しっかり入る
・身体を「一つの塊」にまとめ、力を伝える準備をする
これは
姿勢と軸を一瞬で整えるフェーズ
と解釈されています。
中間フェーズ:あえて“抜く”
・腕や拳を加速させる局面
・不要な緊張は一度下がる
・スピードを最大化するための「緩み」
ここで力み続けると、
動きは逆に遅くなります。
第2ピーク:インパクト直前の“全身ロック”
・当たる直前〜直後
・体幹や関連筋が再び強く活動
・衝突の瞬間に身体全体が剛体化
これにより、
拳だけでなく「体重と運動量」が打撃に乗る
と説明されています。
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これは空手の突きとどうつながるのか?
空手の突きにおいて、
感覚的に理解している指導者は
「最初と最後だけ力を入れる」
といった声掛けをしていることがあります。
ダブルピークの考え方は、
こうした伝統的な感覚を
科学的に裏づけたもの
と捉えることができます。
空手的に言い換えるなら
・最初の締め:立ち方・姿勢・軸を整え、動作を発動させる
・途中で抜く:突きを走らせ、スピードを最大化する
・最後の締め:骨を並べ、必要な部位のみを瞬間的に締める
つまり、
オン → オフ → オン
という身体操作です。
「ずっと力を入れろ」ではなく、
入れる瞬間を間違えるな
という話です。
補足すると、
実際の身体操作は
オフ → オン → オフ → オン
と考える方がより正確です。
リラックスした状態からは力を生み出しやすく、
最初から力んだ状態では、
かえって力は発揮しにくくなります。
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少年部・初心者指導にも重要な視点
力み続ける突きは、
・スピードが出ない
・肩や肘を痛めやすい
・身体が硬くなり、成長を阻害する
といったリスクがあります。
一方で、
ダブルピーク型の動きは
・速く
・強く
・身体を壊しにくい
・エネルギーの省エネ
という特徴を持ちます。
これは
将来まで見据えた空手指導
において、極めて重要な考え方です。
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科学は「空手を否定するもの」ではない
この研究が示しているのは、
空手の感覚が間違っていた、という話ではありません。
むしろ、
・「当たる瞬間に締める」
・「力み過ぎない」
・「無駄な力を使わない」
といった
武道的な身体感覚が、科学によって可視化された
と見る方が自然です。
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まとめ
・世界トップレベルの打撃選手の筋電図には、
ダブルピーク(2回の筋活動の山) が確認されている。
・これは
収縮 → 弛緩 → 再収縮
という高度な身体操作を意味する。
・空手の突きにおける
「締め」「極め」「当たりの制御」 という考え方は、
この現象と非常に整合性が高い。
・力み続ける打撃ではなく、
入れるべき瞬間にだけ入れる。
それが、速く、強く、壊れにくい突きにつながる。
これらの技術は
〝基本稽古〟や〝移動稽古〟でしっかり意識し、
身に付けていきたいですね。
極真世界連合戦士 札幌道場
道場主:今野佑人
TEL:011-590-0725
住所:札幌市西区琴似四条7丁目2-11 サッソンビル1階



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