運動学習におけるアトラクターとフラクチュエーター
- 今野佑人
- 24 時間前
- 読了時間: 4分

現場で使える「動きの学習構造」
日々トレーニングや指導をしていると、
「同じフォームを反復しているのに、本番になると崩れる」
「負荷やスピードを変えると、急に動きが不安定になる」
といった場面に何度も出会います。
最近、運動学習の文脈で整理されている
「アトラクター」と「フラクチュエーター」という考え方は、
こうした現象を理解するうえで非常に整理しやすい枠組みだと感じています。
ここでは、自分なりに学んだ内容を
現場目線で整理して共有します。
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アトラクターとは何か
アトラクターとは、
動作が時間とともに収束し、安定して存在し続けるパターン
を指すとされています。
スプリント時のヒップロックや、
スクワットにおけるヒップヒンジなどが、
代表的な例として挙げられています。
これらは、多少の外乱や条件変化があっても、
結果的に同じ形に戻ってくる
「動作の核」と整理できます。
アトラクターはよく
“深い溝”に例えられます。
溝が浅いと、少し揺らされただけで外に出てしまう。
溝が深いほど、揺らされても自然と元の形に戻ってくる。
運動学習とは、この溝を
・新しく作る
・より深くする
・より望ましい位置に掘り直す
プロセスだと考えられています。
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フラクチュエーターとは何か
フラクチュエーターは、
動作にゆらぎや多様性を与える要素
を指す概念です。
腕振り、胸郭回旋、初期姿勢、負荷、スピード、接地条件など、
「動作の核そのものではない要素全般」が
ここに含まれると整理できます。
重要なのは、
フラクチュエーターが
「邪魔な不安定要素」ではなく、
学習を深めるために意図的に使われる要素
と捉えられている点です。
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アトラクター × フラクチュエーターの具体例
・スプリント
スプリントでは、
ヒップロックがアトラクターとして整理されることが多い
と言われています。
一方で、
腕振りの大きさ、胸郭回旋の幅、スタート姿勢、荷重条件などは、
フラクチュエーターとして変化させる対象になります。
腕振りを制限しても、
姿勢や条件を変えても、
ヒップロックが維持されているかどうか。
ここが、動きが安定しているかを見る
一つの指標になります。
・バッティング
バッティングでは、
腰部から末端への連動が
アトラクターとして整理されることが多いようです。
肘角度や膝角度、投球コースなどは状況によって変化しますが、
腰からの連動が保たれているかどうかが
重要視されています。
・スクワット/ヒップヒンジ
スクワットでは、
股関節主導のヒップヒンジが
アトラクターとして考えられます。
上肢ポジション、足幅、テンポ、負荷を変えても、
ヒンジが崩れないかどうか。
この再現性が、
学習の進み具合を判断する材料になります。
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差異的学習(ディファレンシャル・ラーニング)
と制約主導型アプローチ
制約主導型アプローチでは、
課題・環境・個人の制約を操作することで、
動作が自己組織化されると考えられています。
差異的学習(ディファレンシャル・ラーニング) では、
あえてノイズやばらつきを加えることで、
結果的にアトラクターが強化される
と整理されています。
ヒップヒンジの学習を例にすると、
・腕を胸前で組む
・オーバーヘッドで保持する
・メディシンボールを抱える
・テンポを変える
といった形で
フラクチュエーターを変化させることで、
条件が変わっても崩れないヒンジが
形成されていきます。
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まとめ
・アトラクターは、動作の中で最も変わらない核となる要素。
・フラクチュエーターは、学習を促すために意図的に変化させる要素。
・変動練習の本質は、
何をアトラクターと捉えるかを明確にしたうえで、
フラクチュエーターを操作すること
だと整理できます。
日々の指導やトレーニングで行っている工夫を、
この視点で振り返ってみると、
なぜその練習が有効なのかが
言語化しやすくなると感じています。
代表/パフォーマンスコーチ 今野佑人
88-Performance.【パーソナル × ピラティス × 栄養指導】
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